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  ノルディックウォーキング
                              菅野ゆきえ
 
 
 今年の春先から週一回、地域の「ノルディックウォーキングの会」に参加している。写真を見ておわかりのように、両手にスキーストックみたいなものを持って、姿勢よく大股でゆっくりとしっかりと歩く有酸素運動である。
 元々は、クロスカントリーの選手が夏場のトレーニングのために、ストックの先端を三角形のゴムに変えたものを持って野山を歩き、筋力強化を図ったことから生まれたスポーツだという。
 毎週近くの児童公園に10人前後の中高年者が集まって(広報の募集では誰でも参加OK、となっているのだが何故か中高年者しかこない)、インストラクターの指導の下、準備体操をしてから一列になり、隣接する広大な区民公園の中を1時間程かけてぐるりと歩いてくるだけなのだが、これが意外と爽快で楽しい。ハマっている。
 
 昨夏腰椎を圧迫骨折して以来、どうも腰の調子が悪く、日によっては僅か500m歩くことも辛くなっていたのだが、ノルディックウォーキングだと平気で4km位は歩くことができる。
 これは多分、ストックをつくことで体重が分散され、背骨や背筋への負担が減少し、歩行が安定するためだと考えられる。膝が痛くて悩んでいた知人も、これならあまり膝に負担をかけずに自分のペースで大腿筋を強化できる運動だわと、毎回喜んで参加している。
 
 専門のインストラクターが個々人に細かくアドバイスをしてくれるのもありがたい。
 「菅野さん、もっと肘を伸ばしてね」「佐藤さん、体が右に傾いているわよ」等々。
 普通のウォーキングは少し気を抜くと背筋が丸くなったりしがちだが、ノルディックウォーキングは最初から最後まで肩周りや肩甲骨周りの筋肉もきちんと使うので、全身のエクササイズになるようだ。
 何も持たないウォーキングだと一時間当たりの消費カロリーは280kcalだが、ノルディックウォーキングだと400kcalというデータもある。
 
 仕事を辞めてからムクムクと右肩上がりを続けていた私の体重が、このスポーツを始めたおかげでようやく元に戻りつつある。うれしい。
 ゆっくり歩くので、季節の花を楽しむ余裕もある。
 
 この区民公園は池や花壇もきちんと整備されており、折々の花や樹木を眺めながら歩くことができる。 今はアジサイやアメリカデイコ、日日草、ユリ、マリーゴールドなどが美しい。たわわに実をつけたヤマモモの木も見つけた。誰も名前を知らない植物はスマホのGoogleレンズで写真を撮って調べてくれる人もいて、知識が深まる会でもある。
 保育園の子ども達がおそろいの帽子をかぶり、手をつなぎながら散歩している。可愛い声で口々に「こんにちは」と、挨拶してくれる。池にはカモの親子が仲良く泳いでいる。なんとも癒される時間でもある。
 
 さて、こんなにも魅力的な「ノルディックウォーキング」であるが、世間一般ではスポーツとしてまだ市民権を得ていないのかもしれない。そう思う出来事があった。
 先日夕方のこと。ひとりでストックを持って近所の遊歩道をウォーキングしていたら、たまたま自転車で通りかかった知り合いの人が、
 「どうしたの、菅野さん! 杖なんかついて足でも折ったの?」と、びっくりしたように声をかけてきたのだ。
 「あ、いや、これは杖じゃあなくて……ノルディックウォーキングというスポーツで……」
 説明に大わらわの一コマだった。
 
 「あらまぁ、そんなスポーツがあるなんて知らなかったわ。ま、転ばぬ先の杖っていうからいいかもね。じゃあ気をつけてね」
 (…だからぁ、杖じゃないってば!)という言葉をのみこんだ。
 
 ちゃんとスニーカーを履き、半袖シャツにスリムパンツ、キャップまで被っている。腰のウエストポーチには水のペットボトルがそれらしく刺さっている。それなのに「杖」をついているように見えちゃう?もしかして、知らずに私の腰や背中が曲がっていて、傍から見れば婆さん歩きをしていたってことかしら?
 あわててショーウィンドウに駆け寄り自分の横姿を映してみる私なのであった。
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(乱蘭通信HPバックナンバーに過去の文章 載せてあります。)
http://ranrantsushin.com/backnumber.htm 
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