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打つ田には 稗はしあまた ありといへど
     選
えらえし我れぞ 夜をひとり寝る
                
万葉集 柿本人麻呂


水を多み 上田あげに種蒔き 稗を多み
     選
らえし業ぞ 我がひとり寝る
                
万葉集 作者不明



 「五穀豊穣」の五穀(ごこく)として数えられることがありますが、通常は「稗」でなく黍(きび)が入いります。また、そばも五穀に入りません。

 通常の五穀は 米、麦、粟(あわ)、黍(きび)豆です。






  東アジア地方原産です。(日本原産という説もあります。)やせた土地でもよく生育します。昔は主食は米ではなく、この「稗」だったようです。
 うるち、もちなどのちがいもあります。お酒の原料にもなります。

 寒冷地の作物でもあるので、「冷え」から「ヒエ」に なったとの説あります。「稗」の漢字は後からです。漢字が日本に入ってきてからです。音の 「ヒエ」の方が古いのです。




ひ   え           〔いね科〕
Panicurn Crus-galli L. var. frumentaceum Trin.

 田や畠に栽培される一年生草本で、高さ1~2mに達する。茎は粗大で直立する。葉は線状皮針形で先は次第に細まって鋭く尖り、縁に細かいきょ歯がある。葉の幅は3cm位で長い鞘を持ち、小舌はない。秋、茎の頂に円錐穂を着け穂は粗大でやや長円錐形、枝も円柱状で非常に密に淡緑色または紫褐色の花を着け、穂軸には白色の剛毛がある。小穂は小さく1花を有し、芒はないものもあるのもある。第1包頴は小さく、第2包頴と護頴はにとんど同形同大、表面に毛がある。第2包頴と護頴は軟骨質で光沢がある。雄しペ3個と雌しべ1個があり、頴果は小さいが人の食用になり。また鳥の飼料に利川する。ヒエには畑に作る種と水田に植える種とあって、畑種をハタビエ、水田種をタビエと呼ふ。長い紫色の芒がある種をヒゲビエ、一名クマビエ(f.aristatum Makino)といい(湖南稷子はこれを指す)、芒のない種をワサビエといい(光頭稷子?)。短かい芒がある種をムクロモチという。
 〔日本名〕ヒエは日毎に盛んに茂るので日得の意味といわれている。またヒエは稗の字音から出た語で、エはヒを伸ばして補った音であるともいわれている。
 〔漢名〕稗。
-牧野植物図鑑-





ヒエの実です。殻をむくとこんな色合いになります。



 今回は稗を持ち出しました。
 今回は稗を持ち出しました。縄文時代から食べられている一番古い、忘れてはならない穀物です。
 稗は五穀として人間の食糧にもなるのですが、きびや大豆の方が優先されることの方が多かったようようです。 恐らく弥生初期は大切な食糧だったのですが、他の味の良い穀物の生産が軌道に乗るに従い、価値が落ちたのでしょう。万葉集でも、田んぼに生えて困る雑草扱いです。
 しかし、現在は、様々な栄養分を含んだ健康食品として、脚光を浴びています。五穀から除外された稗やそばが飢饉の時、日本人の命をつないできた事実は、忘れてはならない歴史です。     (ま)


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