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ぬばたまの 夜の更けゆけば 久木生ふる
  清き川原に 千鳥しば鳴く       山部赤人


去年咲きし 久木今咲く いたづらに
  地にか落ちむ 見る人なしに      
作者不明


波の間ゆ 見ゆる小島の 浜久木
  久しくなりぬ 君に逢はずして     
作者不明


度会の 大川の辺の 若久木
   我が久ならば 妹恋ひむかも      柿本人麻呂

                     四首は万葉集


うちなびき 春さり来れば 久木生ふる
  片山かげに 鶯ぞ鳴く    
金槐和歌集  源 実朝


「ひさぎ」は赤芽槲の古名。比佐岐、久木、楸の漢字当てます。







薬効  胃かいよう、痔

・薬用部位 樹皮、葉っぱ

・生薬名 「赤目柏(あかめがしわ)」


 葉っぱは春先赤く、「槲(柏:かしわ)」と同じように食べ物を乗せるのに使用した。祭礼にも使われた。赤目槲(あかめがしわ)の名がついた。


 



あかめがしわ  (ごさいば)         〔とうだいくさ科〕
Mallotus japonicus Muell.Arg.
 本州、四国、九州の山野に普通にみられる落葉高木で樹皮は褐色、生長が非常に速い。葉は長い柄をもち、互生し、卵形または円形で先端がのびて尖り、時に2~3裂している。枝にも葉にもこまかい星状毛があり、特に若葉では甚しい。葉柄は普通赤く、また非常にわかい葉では特に紅赤色の毛がぎっしりとおおっていて美しい。雌雄異株。夏に梢に総状あるいは円錐状の花序をつけ、多数の花を開く。この穂軸や穂の枝は赤褐色の短かい毛でおおわれている。花は小さくて、ごく短かい柄をもつか、または全然柄がないこともある。雄花は黄色、包葉は三角状線形で約3花を包み,がく片は3~4裂し,多数の雄しべをもつ。雌花は短かい花穂に密着していて、短かい柄がある。がくは3裂し、子房には3柱頭がある。さく果は外面に刺が多く、熟すと3枚のからに裂け、紫色で球形の種子を出す。
 〔日本名〕赤芽槲は芽が紅赤色であることによる。昔 からこの葉に食物をのせたことにより五菜葉または菜盛葉ともよばれる。〔漢名〕梓は誤って使われたもの。正体はシナササゲである。支那の酒薬子樹は別種であるが近いものである。
-牧野植物図鑑-



 


 今回は赤芽槲(柏)という植物です。呼び名は他にもあります。六月七月頃花は咲きますが、春先の赤い葉っぱが特徴的なので、春先の季節に合わせました。柏と同じで、食物を載せて神様に捧げる時に使われた様です。
 僕は馴染みなかったのですが、四首の歌が万葉集に載せてありますので、古代の人には馴染み植物だった様です。     (ま)

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