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リ ヤ カ ー

 バブル景気の前、僕の20代のころ。日本人は豊かになり、誰でも小型車を持てる様になった。そして、消えてゆくものがあった。
リヤカーもその一つであった。
 人々は手近な荷物の運搬用に、リヤカーを引いていた。
 商店などの営業用には、自転車に付け、街を走り回っていた。
 それが、軽自動車にドンドン代わり、街からリヤカーが消えていった。

 それは、何か寂しさが心の隅をよぎる風景であった。便利なものが増えるのは仕方ないが、消えてしまうのはもの悲しいことである。


 バブル景気がはじけ、長い不景気の時代となり、人々は高度成長の慌ただしさを忘れていった。そして、消えたリヤカーを街で見かける様になった。宅配業者が、使い始めたのである。  狭い道路は軽自動車でも、なかなか停めにくい。街中の狭い路地は、リヤカーの方が便利なのです。そして、心が和むリヤカーの復活です。

 新しいものと古いものが、共存する社会。長い不景気がもたらした、贈り物です。多様に物事考えたら、捨ててしまうのは、勿体無いことです。
2024.9.22. Mamoru Muto
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