─ 2012年 ─
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3 月 の 庭 劇 場
『 鋏 と 糊 』
3月29日(木)~ 30日(金)
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庭の乙女椿が咲きました。しかし、ももいろの花弁は客席に向かった面ばかりに咲き、裏面はチョボチョボなのです。
人に、鼻孔が正面にあたるなら、うなじは裏面です。鏡で映しだされたわたしの頭髪も白いものが一段と増えた。しかし髪を切れば、うなじの辺りが黒々としている。
そのつど思うのです、不如意である…と。
椿の樹もわたしの頭髪も、真正面を気にし過ぎているのではないか…と。
むかし「ずいずいずっころばし」という遊びがありました。どんなやりかただったのかすっかり忘れてましたが、その歌詞のさいごに「うしろの正面、だあれ…」と唄い、唄いながらゾクッとした背筋の一瞬を記憶している。
真正面でしか時間の経過を直視できないのなら、その時、うしろの時間にわたしはどんな期待をしていたのか。
そして今は、フランケンシュタイン博士の制作のように、過去を材料にして出来事をツギハギしているのだろうか。
神のように自在をたぐれないわたしは、人の目を借りる。「わたしの背後は、なにか見えましたか」「はい、椿の木と梢ごしに月が、世界は美しいねぇ。」 首くくり栲象
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