prev top next


4月の庭劇場

『 春 の 魚 影 』
4月23日(土)~25日(月)


━━━━━━━━



 庭にイチジクの木がある。木といっても直径15ミリほどの太さで、4月の中頃に赤ちゃんの掌ほどに葉っぱを広げ、真夏には小型の団扇のおおきさに成長し、日蔭を虫たちに提供している。

 このイチジクは東京のど真ん中、虎ノ門駅に近い幹線道路の歩道に生息していた大木で、その枝を千切って庭に移植したものです。イチジクの生命力は強いのでしょう。移植してすぐ葉をおとし、丸一年間沈黙をしていたのですが、翌年の春でしょうか、枝の先端が微かに動き、間近な空気へ波動していた。

 植物は動物のように必死で生きるいきものの姿を見せてはくれない。まして無花果のイチジクです。狂い咲きのいいも当たらない。しかし、すべての音は天に宿るのです。 直径15ミリほどのイチジクの先端に天の調べは降り注ぐ。そして梢の先は絶妙な動きでタクトを振ってくる。

          首くくり栲象

prev top next