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5月の庭劇場

『 蝉 の だ ん ま り 』
5月24日(火)~26日(木)


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 真っ暗闇を歩いたことがあります。一歩脚を踏み出す。きもちの隅々に不安が点滅する。後ろ向きで歩いみた。その一歩は前向きよりもリラックスしている。こんどは白昼です。街道を後ろ向きで歩く。目の前に拡がる風景に魅了され目的地への興味は薄れてゆく。車窓の風景は横切ってゆきますが、こちらは奥へ奥へとぐんぐん広がるのです。

 なんでそうなるのか、たぶんその秘は背中にある。

 まだ蝉の声は聞かない。幼虫は7年あまりの土中生息の最終段階。坑道での息づかいは木々の根元界隈に響いている。時がくれば安全を確認し坑道から這いでてくる。その幼虫の形と動きはまさに原始の姿そのもの、気に入った木々に停止して羽化が始まる。甲冑のような殻の背中が割れる。幼虫はむき出しの背中を全面に立て後ろ向きで大気に入ってゆく。

          首くくり栲象

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