prev top next


3月の庭劇場

『 寒さの鋭くとがった真昼、定めた時があるのだろうか、椿は身を粉にして、蕾を開花させているように思えた。 』
27日(月)~ 30日(木)



━━━━━━━━

 この春、庭に石が産まれた。馬鈴薯のメークィンに姿、大きさ、そっくりな石が二つ 。

 寒い朝、庭に霜柱が立ちます。それまで地中に埋まっていた石が霜柱の力で浮き上がる。毎朝、足袋で防寒した足でわたしは庭を動き廻わる。指先で霜柱をラッセルしてゆく。そこで浮き上がってきた石と足の先が出逢う。いま庭一面、何度目かの霜柱で掘り起こされ、小さな凸凹を造って固まっています。その凸凹の上に二つメークィンに似た石ころは、無邪気そうにごろごろと回転しています。

 深夜、庭を徘徊するわたしの足の先は、どちらかの石ころ当たる。庭のところどころ、石ころの十数倍の窪みが、幾くつかできている、その窪みへ、やはり石である、地面にドでかく音を響かせ、まるで王さまのような風体で、ゆったり底へと転がるのです。

          首くくり栲象

prev top next