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9月の庭劇場

『 夏の息 』
23日(土)~ 28日(木)

24日(休演)

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 人が息絶え絶えの有り様を、虫の息と形容しまが、その喩えの元の虫の息を耳にする人は稀でしょう。
 わたしが毎月開催する庭劇場は、小さい庭ですがそれなりに草花と共存の虫たちも葉の茂みや、軟らかな土の中で生息しています。
 ある日の早暁。蒲団に横たわっていますと、庭でなにものかの息が、空にむかってなにごとかを奉じている、といった空想的な気配を感知しました。庭に面したガラス戸を引き開けると、数ヶ月まえの散歩時、信号機で立ち止まっり、足下で目に留まり、手にとった黒色の小石が、庭への下がり口の濡れ縁の上に、そのとき置いたままで鎮座していました。鎮座と形容しましたがwide、奥行、高さ共々三センチほどの小石です。しかしその形と風貌は、わたしには計り知れない重さを有する大岩を想像させるのです。

 まさかこの小石がと、しかしこの小石は食もなく、同然として欲もない。空気を汚さず、この世に静謐として生存している。その姿はこの庭の生存者である草木だけでなく、風や雨や日照りや干ばつや土、この夏わたしはお目にかかれなかった空にたちのぼる入道雲も含め、それらがこの世で遺す一期一会での黙しを、早暁、この黒い小石はわが身を触れる仕草で採集していたのではないかと思った。

          首くくり栲象

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